久喜市の防災におけるIT活用とその課題
皆さんは「VACAN Maps」というサービスをご存知でしょうか。
VACAN Mapsは、AIとIoTを活用し、パソコンやスマートフォンから、避難所の位置や混み具合を確認することができるサービスです。
久喜市は、2021年3月26日に、このVACAN Mapsを提供するスタートアップ「株式会社バカン」と、災害発生時における避難所の混雑情報配信に関する協定を締結しています。これにより、災害時には、久喜市内の避難所計58カ所のリアルタイム空き情報が、インターネット上で確認できるようになりました。混雑状況は、「空いています」「やや混雑」「混雑」「満」の4段階で表示されます。
台風19号からの教訓から得た一つの具体策
台風19号の時に、わたしが感じた課題の一つに、避難所の場所やその開設状況、混雑状況がわからないという課題がありました。久喜市への電話が繋がらなくなり、避難所の開設状況を調べる手段がなくなってしまったため、家族を避難させる前に、まずは自分で避難所に行って状況を確かめ、その上で避難せざるを得ませんでした。緊急時に、このような「無駄な交通量」を削減することができれば、街の混雑を緩和し、スムーズな避難を実現する上では非常に重要なサービスであり、久喜市が防災対策を少しづつでも実施してくれていることは、評価して良いことなのではないかと考えています。
しかし、これだけで手放しに喜んでもいられません。すぐ近くに利根川が流れる栗橋地区は、高台が少なく、避難所の受け入れ人数も限られています。避難所の開設状況がわかったところで、人の避難行動まで予測できるものではなく、数分のタイムラグで避難所やその周辺の状況は一変するはずです。「空いてると表示されていたから来たのにもう一杯になっていた」ということはきっと、頻繁に起きるでしょう。また「満」と表示されていたのに実は空いているというケースも容易に想定できますし、何より、避難所の職員が受け入れ作業に手一杯になり、更新する時間が取れないということも起こり得そうです。
※混み具合の情報は、各避難所の職員がインターネット上の管理画面から操作することで更新されるようです。
このような事態を回避するためには、いまあるソフト・ハード面のインフラを皆で活用できる状態を作ること。いざというときは「VACAN Maps」を地域防災のリーダーが更新する、その情報を他のSNSなどでも流す等、行政だけに頼らない地域防災コミュニティとの連携がカギであり、その連携を普段のコミュニケーションの中で育んでいかなければなりません。
安心できる暮らしを実現するためには、市政に全てを頼るのではなく、地域コミュニティが防災リテラシーを実装し、久喜市とスムーズな連携ができるようになることが重要だと思います。このように先進的な防災モデル地区となれるようみんなでコミュニティを作りませんか。いまわたしは、久喜市の政治を動かせる立場にはありません。でもできることはあります。できるだけ取材を重ねて、他の地域の先行事例を理解することと、私たちの持っている施設(2021年秋にオープン)に日常的に人が集い、地域の課題解決の拠点となることの2つです。
特に災害対策は、情報技術の導入だけでは実現できません。防災訓練を行うだけでも実現できません。それらを実現するために重要な防災コミュニティのデザイン。これを実現するためにも、せがわたいすけに力を貸してください。これは理想論かもしれませんし、簡単にうまくいくなどとは思っていません。それでも諦めることなく理想を掲げ、理想に近づく努力をしていれば、数年後には理想に近づいていることを、わたしは過去の経験から知っています。やれる方法を考えるだけではなく、それを一つ一つ着実に実現していく。その先にどんな地域社会が出来上がるのか。自分の目の前にある課題に取り組み、みんなでこの地域を1ミリずつでもいいから、一緒に動かしていきませんか?