地域の防災課題に取り組む
令和元年10月12日。
過去に例をみないほど強い勢力で久喜市を通過した台風19号は、久喜市に226.5ミリもの雨量をもたらしました。1日当たりとしては、観測史上最大の雨量だったといえば、その勢いの凄まじさがわかっていただけるのではないでしょうか。荒川そして久喜市を流れる利根川の両河川で「はん濫危険水位」を超え、久喜市として初めて避難情報を発令することとなりました。
結果的に、久喜市においては人的被害はなかったものの、地域防災という観点では、様々な課題が浮き彫りになりました。埼玉県立栗橋北彩高等学校の避難所開設が大きく遅れたこと、避難所職員が不足して多くの避難所で受け入れに時間がかかり、長蛇の列ができてしまったことなど、行政対応に大きな混乱があったのは事実ですが、史上初の有事のなかで、市の職員たちが必死になって混乱を乗り切ろうとしていたこともまぎれもない事実。行政サービスの改善を求めることは大切ですが、限られた予算、限られた人員、限られた資源の中で市政を運営する以上、残念ながら、全てを市政に求めることは現実的ではないでしょう。そこで今回は、わたし自身が地域のためにできることを考えてみたいと思います。
まずは、この日の荒川・利根川の河川の水位と、久喜市が発令した避難情報を、時系列でおさらいしてみます。
(0)久喜市周辺の主な河川の水位と、発令された避難情報
荒川(熊谷水位観測所)の水位 | 利根川(栗橋水位観測所)の水位 | 久喜市の避難情報発令 | |
10月12日 14時00分 | 避難判断水位5.00mに到達(レベル3) | ||
10月12日 15時50分 | 菖蒲地区に避難準備・高齢者等避難開始を発令(レベル3) | ||
10月12日 16時00分 | はん濫危険水位5.50mに到達(レベル4) | ||
10月13日 00時00分 | 避難判断水位8.10mに到達(レベル3) | ||
10月13日 00時40分 | はん濫危険水位8.90mに到達(レベル4) | ||
10月13日 01時00分 | 久喜・栗橋・鷲宮地区に避難準備・高齢者等避難開始を発令(レベル4) | ||
10月13日 02時00分 | 氾濫危険水位を大きく超え水位9.51mに到達
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市内全域に避難勧告を発令 (レベル4) |
久喜市は、災害対策本部を設け、荒川の水位が、避難判断水位の5.00mに到達してから、1時間50分後に、菖蒲地区に避難準備・高齢者等避難開始を発令しました。少し時間がかかったという意見もあるかもしれませんが、その後の市内全域に避難勧告を発令するに至るまでの情報発信という点では、非常に迅速な対応だったように感じています。
では、次にわたし自身が貢献できるのではないかと考えていることをお伝えしたいと思います。
(1)避難に関する情報が届かない人たちをどう救うか?
久喜市が行なったアンケートによれば、防災無線によって避難情報の内容までしっかり把握できた人は、わずか13.6%でした。わたしも防災無線が流れているのはわかっていましたが、流れている内容を聞き取ることはできませんでした。幸い、久喜市は、ツイッターなどのSNSメディアを活用して、出来うる情報発信を行ってくれていたため、わたし自身は情報不足に陥ることはありませんでしたが、一方で、現状の手段だけでは情報が届かない高齢層の人たちに、どのようにして情報を届けるのかは大きな課題です。少なくとも、大切な人の命を預ける防災インフラとして、防災無線だけに頼るのは、あまりにも危険だと言えるでしょう。
では、高齢化が進む久喜市では、どのような防災情報インフラを持つべきなのでしょうか。まずは、久喜市が行なったアンケートの中に、興味深い質問があったので紹介します。以下は、「防災行政無線のほかに災害情報などを知らせる手段として、何が有効であると考えますか。」という質問に対してのアンケート結果です。
このアンケートの中で、わたしが注目したのは、①の「自主防災組織など、地域での声がけによる情報連携が有効である」という回答です。これを回答した人の割合は18.5%と、それほど多くはありません。では、なぜわたしはこの回答に注目したのでしょうか。それは、行政サービスの拡充が必要な回答が大多数を占める中で、①だけは、自分たちの地域の努力で解決できることだからです。
冒頭にも書いたように、限られた資源の中で市政を運営している以上、残念ながら、全てを市政に求めることは現実的ではありません。そこで、わたしが有事の際に活用したいのが、防災組織ではなく、スポーツ団体や文化サークルです。情報伝達に必要なのは、大きな声量でも、防災の専門知識でもないのは明らかです。とにかく情報を届けるためのコミュニティが必要なのです。幸い久喜市にはたくさんのスポーツ団体、文化サークルがあります。これらのコミュニティを避難情報のネットワークとして活用すれば、防災無線やSNSでは情報が行き渡らない人たちにも、情報が伝わるのではないでしょうか。
わたしは、令和2年7月に熊本を襲った豪雨による人吉市および球磨村渡地区の洪水被害の際に、サッカー元日本代表の巻誠一郎さんの活動を見て、スポーツが災害時に役立つということに気づかされました。巻さんは、生きたスポーツコミュニティを活用して、情報を収集したり、情報を周知したり、救援物資を届けたりして、災害支援を行なっていたのです。わたしは、災害から2ヶ月がたった令和2年9月に、巻さんの活動に3日間に渡り行動を共にしました。もちろんわたしは、巻さんのように有名な人でもないし、影響力があるわけでもありません。しかし巻さんのように有名じゃなくても、もしかしたら、自分がスポーツ団体や文化サークルの人たちとの繋がりを持つことができれば、いざという時に、地域のために役立つことができるのではないか」と考えました。
いま、わたしが考える地域防災のカギは、スポーツや文化活動を行なっている「生きた団体コミュニティ」にあると考えています。有事に備えて、ぜひわたしと情報交換をさせていただきながら、地域の絆を深めませんか。もしよければ、せがわたいすけのお友達になってください。LINEで様々な情報をお届けします。
(2)避難所へ行けない人たちをどう救うか
台風19号では、避難所の収容人数不足や避難所開設の遅れなどの課題が顕在化しました。わたしの友人は、栗橋北彩高等学校に行ったところ、避難所が開設されておらず、はるか遠方の久喜総合体育館へ案内されたそうです。車の運転ができない老夫婦にすら、そのような案内がされていたと聞くと、相当混乱していたのだろうと想像します。
わたしが代表を務めるファルカオフットボールクラブでは、もうじき、南栗橋地区に拠点をもうけ、さらにバスを保有する予定があります。有事には、このバスを活用できないかを考えています。久喜市とファルカオフットボールクラブで防災協定を締結し、有事には体の動かせない老人の家を回り、避難所への輸送を行うのです。
このような防災シーンでのバス利用には、各方面へ許可を取らないと実現することはできませんが、可能性は十分にあると思っています。また、バスは車いすユーザーを想定したものではないため、バスの乗り降りをどのように行うか、巡回の順番をどのように行うか、輸送先で受け入れてもらえなかった時はどのように対応するのかなど、議論しなければならない課題はたくさんあります。これらを地域住民の方々と会話して、課題解決に向けてアクションを起こしていきたいと思っています。
最近では、スポーツクラブが社会のために貢献する動きが行われるようになってきました。Jリーグクラブを始めさまざまなスポーツ団体が「スポーツSDGs」への取り組みを始めています。わたしが代表を務めるファルカオフットボールクラブは、浦和レッズや大宮アルディージャのような有名なJリーグクラブではありませんが、小さな街クラブだからこそ、地域に根付いて、地域社会のインフラとして行政では手の届かないところを担うことができるのではないかと考えています。まだ構想段階ですが、スポーツクラブが地域防災に取り組むという新しい発想を、実現できる日を楽しみにしていただけたらと思います。
(3)今まで南栗橋の地域の声を市政に届ける議員さんはいましたか?
栗橋地区は、利根川がすぐそばを流れているにもかかわらず、この地域には避難できる基準に見合う高さの建物がほとんどありません。このため、実は久喜市はラウンドワンと防災時の協定を結んでおり、いざとなればラウンドワンに避難することも可能となっています。しかしハザードマップには、そのことは書かれていないため、ラウンドワンに避難できることを知る住民はほとんどいません。
そこで、模索したいのが、県や国との連携です。近隣地域には、国が保有する利根川上流河川事務所、そして県が保有する権現堂公園があります。これらの場所に避難所を開設するような流れができないものでしょうか。このような地域からの要望を、今までの議員さんは、市に届ける力はありませんでした。いや、それらの意見を吸い上げるような努力をしていませんでした。それでは、私たちの暮らしはいつになっても安心できません。
もちろん、国や県を動かすことは容易なことではありません。わたしにその力があると言い切る自信も、いまはまだありません。でも、少なくとも、地域住民の声を市政に届け、国や県と連携して地域住民の安心できる生活を実現するために、努力する自信はあります。これから、みなさまの暮らしの課題を聞かせていただきたいと思っています。もしもお時間があれば、ぜひわたしと気軽に話ししませんか。