
防災の視点からみた新ごみ処理場の煙突設計の正しさとは?
新ごみ処理場の計画をめぐっては、議会内でも意見が分かれており、一部では「光る煙突」という言葉が使われ、この建設事業全体がムダな事業であるかのように語られることがあります。
しかし、まず整理しておきたいのは、久喜市では、現時点で、煙突を光らせる、いわゆるライトアップを行うといった計画は示されていないという点です。「光る煙突」という表現は、計画内容とは異なるイメージが先行した、揶揄的な呼び方に過ぎません。
本来注目すべきなのは、煙突の外観ではなく、その構造と機能です。とりわけ防災の観点から見ると、今回の煙突設計には重要な意味が含まれていることを、市民の皆さんには知っていただきたいと考え、この記事を書くことにしました。
災害時に問われるごみ処理施設の継続稼働
ゴミ処理場と防災という観点で、知ってもらいたい事例があります。2024年の能登半島地震(石川県)で、新潟県燕市のごみ処理施設の煙突が大きく傾いた事例です。地震によって高さ55メートルの煙突が途中で傾き、その影響で焼却炉の複数系統が停止し、処理能力が大幅に低下しました。煙突が損傷することで、施設全体の稼働が制限され、災害ごみ処理に支障が出る状況となりました。このような事例は、煙突の耐震性がごみ処理施設全体の継続的な稼働に直結することを示唆しています。
大規模地震や風水害発生時には、その後の復旧・復興を大きく左右するのが「災害ごみ」の処理です。がれきや災害廃棄物が大量に発生する一方で、処理施設そのものが被災し、稼働できなくなってしまえば、その地域の復旧・復興は大きく遅れることは、容易に想像つくのではないでしょうか。
軽量化・耐震性を重視した「幕煙突」という選択
その点で、久喜市で建設中の新ゴミ処理場では、軽量化と耐震性を重視した「幕煙突」と呼ばれる次世代型の煙突構造が採用されています。幕煙突は、従来の重量のあるコンクリート煙突とは異なり、軽量なフレームと外装材で構成される構造で、地震時に建物全体にかかる負荷を低減できる点が大きな特徴です。
この幕煙突に使われる外装材は、東京ドームの屋根に使われているものと同じ素材で、透過性を持つことから、「光る煙突」という表現が生まれた背景があります。しかしこれは、構造上“光らせることができる”という性質を持っているに過ぎず、実際に煙突を光らせる、あるいはライトアップするといった計画があるわけではないのです。
このように、透過性素材の採用は、あくまで軽量化や点検・補修のしやすさ、構造安全性といった機能面を重視した結果であり、演出や装飾を目的としたものではありません。
また、幕煙突は部材交換や点検が比較的容易で、災害後の迅速な復旧や、長期的なメンテナンス性の向上にもつながるとされています。これは、災害時にもごみ処理施設を止めないための、極めて実務的な設計上の工夫なのです。
見た目ではなく、機能と安全性の議論を
新ごみ処理場は、今後数十年にわたって使われる公共インフラです。その是非を考えるにあたっては、言葉のイメージや見た目だけで判断するのではなく、平時はもちろん、災害時においてもどう機能し、どれだけ市民生活を守れるのかという視点が不可欠です。
煙突をめぐる議論も、「光る・光らない」といった表層的な話ではなく、災害に強い施設としてどのような設計がなされているのかを丁寧に理解したうえで周知していく必要があると感じています。
今後も、さまざまな視点から、久喜市で行われている事業についての議論を深めていきたいと考えています。