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久喜市の地方債の残高が、令和12年度には約682億円になる見通してあることが、最新の中期財政計画に示されております。そして久喜市議会令和8年2月定例会議では、令和8年度一般会計予算において、地方債の起債額220億円が批判的に取り上げられています。

たしかに、令和5年度の中期財政計画では、令和8年度の地方債の起債額想定は約150億円、令和6年度では約160億円とされていたことから、数字だけを見ると、急激に借金が増加しているように感じられるのも無理はありません。

ただし、この「682億円」という数字は、久喜市全体の財政規模との関係で見ていく必要があります。令和6年度の久喜市の標準財政規模は約336億円であり、地方債残高682億円は、その財政規模の中で管理・運営されている負債であることを忘れてはなりません。

久喜市における682億円の地方債。これを家計に例えると、世帯年収700万円の家庭が、約1400万円の借金をする状態に近いと言えます。仮に3,000万円の住宅ローンを30年で組んだ場合、借入残高が1400万円となるのは、返済がそれなりに進んだ段階です。そのような家庭は、収入の範囲内で生活し、子育てや教育費用なども見据えながら、計画的に借金を返済しているのではないでしょうか。

われわれ一般人の感覚では、682億円という数字だけを見ると、途方もなく大きな借金のように感じられます。しかし久喜市の財政規模の中で捉えると、その見え方は大きく変わります。単に金額の大きさだけを見て不安になるのではなく、財政規模や収入とのバランス、返済の見通し、そして何のために借りているのかといった中身をあわせて評価することが大切だということです。

「交付税措置のない地方債」が使われた背景について

地方債には、国が返済を一部支えてくれるものと、久喜市が自分たちの収入だけで返すものの、大きく分けて2種類があります。このうち、国の支えがないものを「交付税措置のない地方債」と呼びます。

家計に例えると、

  • 国の支えがある地方債=補助のある住宅ローン
  • 交付税措置のない地方債=自分の収入で返すローン

というイメージです。そのため、久喜市でもこれまでは、交付税措置のない地方債は「できるだけ使わない」という方針がとられてきました。

本日の議会における執行部の答弁では、令和8年度の地方債残高見込みのうち、交付税措置のない地方債は約43億円であることが明らかになり、1年前の約28億円から増加していることも示されました。このような状況に対し、「地方債発行の方針を変えざるを得ない財政状況なのではないか」という指摘が出るのも、無理はないかもしれません。

実際、交付税措置のある地方債は、借金をするけど、国があとで借金した金額の一部を補填してくれるので、財源として「非常に有利」とされ、投資的事業を行う際には積極的に活用されてきました。

一方で、市が示した交付税措置のない地方債約43億円の内訳を見ると、新ごみ処理施設関連事業(周辺道路整備や売電施設など)で約24億円、ふれあいセンターの管理事業で約1.4億円、学校屋上防水などの営繕事業で約13億円が主な内容となっています。これらはいずれも、交付税措置のある地方債を発行したが、事業の一部が、交付税措置の対象から外れたものです。多くの場合、事業を行うと、周辺の事業も伴うものです。これらは議会での議決を経て進められてきた投資的事業であることから、一定の「交付税措置のない地方債」は発生するものなのだとわたしは理解しました。

そして何よりも、学校の屋上防水などの営繕事業については、議会内で、老朽化した学校施設の修繕について、「子どもたちの安全を最優先に、早急に対応すべきだ」という声が上がっていました。またメディアでも久喜市の老朽化した公共施設が取り上げられました。こうした状況を受け、全国共通の課題でありながらも、全国に先駆けて、財政調整基金を活用し、地方債を発行して公共施設の老朽化問題に対応する判断がなされたものであることを忘れてはなりません。

これらの経過を踏まえると、地方債の増加は突発的なものではなく、必要性と緊急性を十分に考慮し、議決した結果であることは明らかです。にも関わらず、対応が進んだら、今度は財政面のみを切り取った批判がなされる状況は、わたしはおかしいと思いますし、そのような批判の声を、市民の皆様には冷静に判断していただきたいのです。

実質公債費比率とは何を表す数字か

地方自治体の財政の健全性を確認する指標の一つに、「実質公債費比率」があります。これは、久喜市が借りているお金を、毎年どれくらいの負担で返しているのかを示す数字です。
地方債の残高そのものではなく、1年間に支払う返済額が、市の収入に対してどの程度の割合を占めているかを見る指標です。

家計に例えると、
「住宅ローンがいくら残っているか」ではなく、
「毎月のローン返済が、給料の中で無理なく払えているか」を確認する感覚に近いものです。

借金の残高が多く見えても、毎年の返済額が収入の範囲内に収まっていれば、家計はすぐに苦しくなるわけではありません。自治体の財政も同じで、大切なのは「返せる範囲で借りているかどうか」です。

久喜市では、地方債の発行が続いている一方で、年間の返済額は標準財政規模や税収の見通しを踏まえ、現時点では無理のない水準に抑えられています。令和6年度決算における実質公債費比率は約4.5%で、国の早期健全化基準(25%)を大きく下回っています。

今後、実質公債費比率は緩やかに上昇し、令和11年度に8.5%程度でピークを迎える見通しが中期財政計画で示されていますが、投資的事業が進んでいる中においても、急激に悪化しない計画となっており、返済能力の面では一定の健全性が保たれていると考えられます。実質公債費比率は、「今きちんと返せているか」「将来も返し続けられるか」を客観的に判断するための、大切な指標だと言えるでしょう。

実質公債費比率と「返済可能性」という視点

なお、「地方債の発行額が増えているにもかかわらず、実質公債費比率が大きく上昇していないのはなぜか」という疑問が浮かびますよね。わたしも最初は、「このままだと、実質公債費比率は、どんどん上昇していくのではないか」と不安に思っていましたが、よく考えてみれば、そんなことはないという考えに変わりました。

実質公債費比率は、地方債の発行額そのものではなく、年間の返済額、いわゆる公債費をもとに算出される指標です。先ほどの家計の例で言えば、「いくら借りているか」ではなく、「毎年どれくらい返しているのか」「その返済が収入の中で無理なく行えているか」を見る指標だと言えます。久喜市の場合、返済額は標準財政規模や税収の推移を踏まえた範囲に抑えられており、そのため、実質公債費比率が急激に悪化しない計画となっているのです。

地方債は、使い方や管理の仕方を誤らなければ、将来世代も恩恵を受ける公共施設やインフラを整備するための「投資」としての側面も持っています。数字の一部分だけをみて不安になるのではなく、財政規模とのバランス、返済の見通し、事業の必要性を踏まえた冷静な議論を重ねていくことが、久喜市の持続可能な財政運営につながるのではないでしょうか。

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