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国はいま、脱炭素の推進と産業競争力の強化を同時に実現することを、大きな政策課題として掲げています。そうした流れの中で、経済産業省は昨年12月から、産業資源や地域に偏在する脱炭素電源などを核に、新たな産業クラスターの形成を目指す自治体や企業の先進的な取り組みを選定・支援する「GX戦略地域制度」の公募を開始しました。

この制度は、単なる補助金にとどまらず、地域の特性を生かした産業集積を国が後押しする仕組みです。その中には、水害リスクが低く、安定した電力供給が可能な地域を想定した「データセンター集積型」という類型も設けられています。

久喜市では、この制度の趣旨が、主に菖蒲地区の特性と重なる点に着目し、データセンターの誘致に向けて手を挙げていることが明らかになりました。比較的水害に強い地形条件を有し、ゴミ処理施設という既存インフラを持ち、脱炭素電源を活用できる可能性があることから、久喜市はデータセンターの誘致について検討を進めている状況のようです。

現時点で、わたしは久喜市から詳細な説明を受けてはおりません。しかし、国の制度の内容を自分なりに調べ、あわせて久喜市の特性やデータセンター誘致の事業性を整理していく中で、このテーマは正面から議論し、前に進めていくべきものだとすぐに認識し、この記事を書くことにしました。

なぜ今、久喜市がデータセンターを検討するのか

生成AIの普及やデジタル化の進展により、データセンターは、行政、医療、物流、防災、金融など、私たちの生活や産業を支える不可欠な社会基盤となりました。その重要性が高まる一方で、国はデータセンターの過度な都市集中を避け、地方分散を進める方針を明確にしています。災害リスクへの備えやエネルギー政策の観点からも、地方自治体が主体的に候補地として名乗りを上げ、検討に参加すること自体が重要な意味を持つ時代になっています。

私自身、かつてローソングループの情報システム部門でシステム運用に携わっていた頃、システムの入れ替えや大きなシステムトラブルが起きると、データセンターへ通い、時には現地で寝泊まりしながら対応した経験があります。電力会社が提供する最先端のデータセンターには大量のサーバーが並び、ファンの音だけが鳴り響く無機質な空間の中で、昼も夜もなく、ただ「止めてはいけないシステム」を守り続ける現場の緊張感は、今でも強く記憶に残っています。

そしてその頃に、データセンターの専門誌か何かで取材を受けた際の記事が残っていました(笑)。

この頃の経験から、データセンターが単なる「箱もの」ではなく、社会を止めないための最後の砦であり、安定した電力や立地条件、災害への備えが何より重要であることを、身をもって理解しています。だからこそ、データセンターの立地をめぐる議論は、イメージや噂ではなく、現実的な条件と責任ある判断に基づいて行われるべきだと考えています。

久喜市がGX戦略地域制度に手を挙げたのも、こうした国の動きと、将来を見据えた判断を重ね合わせた結果だと推察しています。現時点では、データセンターを誘致できると決まったわけではありませんが、将来の産業立地や財政運営を見据え、検討の土俵に立とうとしているいまの状況は、とてもワクワクするものです。

これまで久喜市は、住宅都市としての発展と企業立地の両立を進めてきました。交通利便性や産業用地、首都圏との適度な距離感といった条件は、データセンターという次世代インフラを考える上でも、一定のポテンシャルを備えています。今回の動きは、これまでのまちづくりの延長線上にある「次の段階」と位置づけることができそうです。

財政と環境の両立を見据えた「選んで誘致する」という判断

データセンター誘致の価値は、話題性やイメージではなく、自治体財政にとっての堅実さにあります。データセンターは、大規模な建物に加え、サーバーや電源、冷却設備といった高額な資産を長期間にわたって設置し、24時間稼働を続けます。その結果、固定資産税や償却資産税として、景気変動の影響を受けにくい安定的な税収が見込まれます。

また、事業規模によっては法人市民税の増収も期待できます。人口動態に左右されやすい個人市民税を補完し、税源を多様化できることは、人口減少時代における自治体経営にとって重要な意味を持ちます。人口増だけに依存しない財政構造へと移行するための、有力な選択肢の一つです。

一方で、データセンター誘致には「大量の電力を消費する」「環境負荷が高まるのではないか」といった懸念が伴います。この指摘は正しく、だからこそ自治体側の準備と姿勢が問われます。

久喜市の強みの一つが、ゴミ処理施設における余熱発電です。余熱発電は昼夜を問わず安定して電力を生み出すことができ、24時間稼働が前提となるデータセンターにとって、特に夜間電力の確保という点で重要な意味を持ちます。

さらに、久喜市には地域新電力会社があり、再生可能エネルギーをどのように組み合わせ、地域内で循環させるかを主体的に設計できる体制が整っています。久喜市は、環境負荷を無条件に受け入れるのではなく、負荷を抑え、管理し、説明できる形で「選んで誘致する」ことを目指せる条件が備わっていると言えるのではないでしょうか。

将来世代に説明できる「次の一手」として

データセンター誘致は、短期的な成果を競う政策ではありません。10年、20年先の財政、インフラ、環境を見据えた長期的な判断であり、GX戦略地域制度に手を挙げたことは、そのための第一歩になる気がしています。

「選ばれる街」であり続けるために。
そして、将来世代に胸を張って説明できる自治体経営を実現するために。

これまでのまちづくり、そしてゴミ処理場の建設を進めてきた久喜市の次の一手として、データセンター誘致という選択肢を、国の制度と地域の強みを踏まえながら丁寧に検討していくこと。その議論が前に進むよう、私自身もしっかりとこの事業の内容を精査するとともに、しっかり後押ししていきたいと考えています。

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