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前回は、久喜市の地方債が増加していることについて、私なりの視点で記事を書かせていただきました。

市民の方からは、「有権者が判断できるよう、いろいろな角度からの情報が必要なのでありがたい」「いつも公平無私な情報をありがとうございます」といったコメントをいただきました。評価していただき、ありがとうございます。

一方で、久喜市の財政状況を見てみると、過去に報道された財政調整基金(いわゆる貯金)の不足は解消されましたが、地方債(いわゆる借金)は増加しています。そのため、「借金をしながら貯金をしているのは自転車操業そのものではないか」「家計ではあり得ないのではないか」といった指摘が出るのも、無理からぬことだと思います。

地方自治体の財政状況を、家計に例えて説明することはよくあります。私自身も、市民の皆さんにとってイメージしやすく、有効な方法だと感じています。

その一方で、家計に例えて自治体財政を説明しようとすると、家計と自治体財政の本質的な違いを伝えることが難しく、説明の仕方を誤ると、かえって誤解を招いてしまうおそれがあるとも感じていました。

たしかに、家計だけで考えれば、借金をしながら貯金をするのは不思議に思えます。しかし、少し視点を広げてみると、私たちの身近な生活の中にも、実は同じような状況は多く見られます。

たとえば、住宅ローンを抱えている多くの家庭では、借金がある一方で、生活費や急な出費に備えた貯金をまったく持たない、ということはほとんどありませんよね。ローンがあったとしても、子どもの将来の学費などを、別枠で積み立てているご家庭もあるでしょう。これは、「借金があるから貯金をしてはいけない」という考えではなく、生活を安定させるためには、最低限の備えが必要だと多くの人が考えているからです。

また、会社経営においては、さらに当たり前の感覚かもしれません。企業は、設備投資や事業拡大のために金融機関から借入を行いながら、同時に内部留保を積み立てています。これは、景気の変動や不測の事態が起きた場合でも、雇用を守りながら事業を継続できるようにするための、ごく一般的で合理的な経営判断です。

自治体の財政運営も、この考え方に近い側面があります。ただし、自治体は利益を追求する組織ではありません。税金を原資に運営している以上、必要以上に貯蓄を積み上げることはできません。また、市民生活を安定的に支え続けるという大きな責任を負っていることから、貯金も借金も、長期的かつ慎重な視点が求められます。

自治体経営における「借金」と「貯金」

まず、自治体経営を考える上で、「借金」にあたる地方債が、どのような場合に発行できるのかを理解する必要があります。

地方債は、主に学校やゴミ処理場、下水道整備など、長期間にわたって多くの市民が利用する公共施設を整備する際に発行することができます。これらの施設は、現在の世代だけでなく、将来の世代も利用します。そのため、整備費用を今の市民だけで一括して負担するのではなく、将来世代にも一定の負担を分かち合ってもらうことで、世代間の公平性を保つという考え方のもとで、地方債が活用されています。

ここで知っていただきたいのは、「お金が足りないからといって、安易に地方債を発行できるわけではない」という点です。

一方で、市の「貯金」にあたる基金は、災害や景気の変動、制度改正など、いつ起こるかわからない事態に備えるためのお金です。特に財政調整基金は、「余ったお金」ではなく、行政サービスを途切れさせずに提供し続けるための備えであり、毎年使うことを前提としたものではありません。言い換えれば、市の財政運営を支える“安全装置”のような存在です。

ここで重要なのは、地方債と基金は、そもそも役割と目的がまったく異なるという点です。
地方債は「将来に残る資産を整備するための手段」、基金は「将来のリスクに備えるための手段」であり、目的が重ならないため、同時に存在していても矛盾ではありません。

むしろ自治体では、
「将来に残る施設整備には地方債を活用し、非常時に備える基金は安易には取り崩さない」
という財政運営の考え方のほうが、制度上も運営上も合理的だといえるでしょう。

また、国や県からの補助金や交付税は、事業を実施した後に交付されるケースが多く、事業の実施段階では、一時的に地方債を活用せざるを得ない場合もあります。その後、補助金等が交付された段階で財政上の整理が行われるため、結果として「借金と貯金が同時にある」ように見えることもあります。

大切なのは、借金や貯金の金額だけを切り取って見ることではありません。将来の人口動向や税収の推移、公共施設の更新時期を見据えながら、必要な事業を行いつつ、中長期的な視点で無理のない財政運営ができているかどうかが重要です。

私たち議員は、数字をもとに課題を指摘することができます。一部だけを切り取って批判することも可能ですし、取り上げ方次第では世論を形成することもできるかもしれません。

しかし、自治体は、国の制度や補助の仕組み、将来の市民負担までを含めて理解した上で予算を編成し、行政サービスを提供していかなければなりません。その基盤となるのが財政運営である以上、必要以上に不安を煽るような批判には注意が必要だと考えています。

地方債も基金も、どちらも行財政健全化のための大切な手段です。ただし、使い方を誤れば、将来世代の負担につながることもあります。一つの数字だけを切り取って判断するのではなく、将来世代に過度な負担を残さないために、どのような事業が本当に必要なのか、また、そのためにどのような財政運営を行うべきなのか。
その全体のバランス感覚を大切にしながら、丁寧に予算や決算をチェックしていくことが、議員の役割の一つだと考えています。

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