利根川栗橋水防事務組合の研修視察で、国土交通省関東地方整備局 利根川上流河川事務所へ
昨日11月15日は、利根川栗橋水防事務組合の研修視察のため、国土交通省関東地方整備局 利根川上流河川事務所にうかがいました。そして
(1)令和元年東日本台風(台風19号)での渡良瀬遊水地の対応について
(2)首都圏氾濫区域堤防強化事業
(3)利根川右岸栗橋北堤防強化工事
について、国土交通省防災対策課、沿川整備課、公務第一課の方々に丁寧に説明していただきました。
中でも驚いたのが渡瀬遊水地の重要性。渡良瀬遊水地は掘込式貯水池で、多目的ダムの役割を持ち、洪水調整、流水の正常な機能の維持、都市用水の目的があります。治水と利水の機能を併せ持っているわけですが、台風19号の際は1億6400万の洪水貯留により、私たちの住む地域、そして首都圏を守ってくれました。これによる貯留効果は、栗橋における利根川の水位を1.6メートル低下させたという推計が出ているそうです。つまり試験湛水中だった八ツ場ダムの存在はもちろんですが、渡瀬遊水地がなければ、利根川は越水していたということになります。
またその渡瀬遊水地は、谷中村の住民の方々に移住していただき、村を水没させる形で作られたという歴史があることも学びました。
そして利根川の堤防付近でずっと行われている大規模な工事。これは首都圏氾濫区域堤防強化事業の一環で、いままさに利根川上流部右岸および江戸川の右岸堤防の強化が施されています。下の写真の通り、平成20年と令和4年の利根川堤防の様子を比べてみると、堤防の厚みが大幅に増したのがよくわかります(赤い点線で比較)が、これは平成13年台風で加須地区の堤防で漏水が発生したことに端を発し、平成16年度より行われている首都圏氾濫区域堤防強化事業の成果でもあります。
令和4年3月12日の利根川堤防付近の様子
平成20年12月27日の状態の利根川堤防付近の様子
また利根川右岸栗橋北堤防付近では、県道の付け替えが令和4年9月末に完成しました。すでに地盤対策を施しおわり盛り土工事に入っています。この工事が令和5年3月に完成すると、今度は令和6年度以降に久喜市による防災機能を有した公園の整備が予定され、地域の水防拠点が生まれることになります。
国と県と市が連携しながら、流域治水が行われていることが、地元の工事現場から学ぶことができるのがすごく新鮮でした。
遡れば、江戸幕府による利根川東遷事業にまで歴史を辿ることができる首都圏の治水対策。
安心な暮らしを作るための政策というのは、一長一短で成果が出せるものではなく、脈々と受け継がれていくべきものだということがよく理解できました。