国が暫定予算でも、地方自治体の予算審議が止まらない理由
1月23日に国会が招集され、高市総理が明言しているとおり、今国会は解散総選挙へと向かうことが確定的な状況です。こうした政治日程の中で、「国が暫定予算のままでも、自治体の予算審議は問題ないのか?」と疑問を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際に私のもとにも、「国の予算が年度内に成立しない場合、久喜市の予算はどうなるの?」「市政運営に支障は出ないの?」といった疑問の声が寄せられています。
私自身、昨日から久喜市の令和8年度一般会計・特別会計の当初予算書を本格的に読み込み始めていますが、歳入の審議を進める中で、改めて実感したことがいくつかありました。予算制度の仕組みを理解していれば理屈としては分かっていることでも、実際に審議を通じて「なるほど、こういうことか」と腑に落ちる場面は少なくありません。こうした気づきは、市民の皆さんにもぜひ共有しておいた方がよいと感じました。
そこでこの記事では、地方自治体の予算編成の大まかな流れを確認しながら、国の予算が年度内に成立しない場合であっても、なぜ地方自治体の予算審議や市政運営に直ちに大きな影響が出にくいのか、その理由を整理してお伝えしたいと思います。
地方自治体の当初予算は、国の予算成立前に編成されている
まず、地方自治体の予算編成は、通常、次のような流れで行われます。
前年夏〜秋
各担当課が、翌年度に実施したい事業や必要経費を整理
秋〜冬
市全体の方針や財政見通しを踏まえ、事業の優先順位や規模を財政部門と担当課で調整
年末〜年明け
国の制度や前年実績を基に、国庫支出金や交付金を「見込み」で計上し、予算書を印刷・製本
2月議会
当初予算案として議会に提案、審議
このように、自治体の当初予算は、国の動向を注視しながらも、国の予算が成立する前に編成・提案されています。久喜市の当初予算の編成も同様であり、国が暫定予算であっても、年度内に本予算が成立していても、地方自治体の予算書自体の構成が変わることはなく、ゆえに、わたしたち地方議員の予算審議そのものも、大きく左右されることはありません。
予算制度には、複数の「調整弁」が用意されている
また、地方自治体の予算制度には、国の予算動向や制度変更に対応するための調整弁となる仕組みが、あらかじめ用意されており、当初予算の段階では確定できない事項や、年度途中で条件が明らかになる事業についても、柔軟な対応が可能となっています。
まず代表的な調整弁が予備費です。予備費は、当初予算編成時には見込めなかった支出や、歳入の一時的なずれに対応するためのもので、自治体運営における「安全弁」と言える存在です。
さらに、地方自治体の予算制度には、
- 事業の実施時期を調整するための繰越明許費
- 複数年度にわたる事業を管理するための債務負担行為
といった仕組みもあり、年度単位の硬直的な運営にならないよう工夫されています。
それでもなお、予備費などで対応しきれない場合には、基金の活用や市債の発行といった制度上の選択肢も用意されています。ただし、これらは将来世代の負担にも関わるため、安易に使われるものではなく、議会の議決を前提に慎重に判断される仕組みとなっています。特に、久喜市の場合は、新ゴミ処理場の建設、公共施設の老朽化対策などの投資的な事業を推し進めるために、すでに基金の取り崩しや市債発行が行われてきていますので、今後はより慎重に事業を精査していくべきだと感じています。
このように、地方自治体の予算は、こうした調整弁があることを前提として編成されており、国の予算が年度内に成立しない場合であっても、直ちに市政運営が滞るような構造にはなっていないのです。
給食費無償化に見る、補正予算という「通常の判断」
ここで、調整弁が活用されている具体的な例を紹介します。
2025年12月末の予算案閣議決定により、2026年度から公立小学校の給食費について、所得制限なしで「実質無償化」が実施されることが決まりました。
久喜市では、公立小学校に加えて、公立中学校も給食費の実質無償化(新規事業)も行う方針が示されていますが、この事業については当初予算には計上せず、令和8年度一般会計予算の第1号補正として、今議会に議案提出されることとなっています。
このように、新規施策や、国の制度・財源の動向を見極める必要がある事業について、当初予算とは切り分け、補正予算で判断するのは、自治体運営の一般的な手法の一つです。
補正予算というと「想定外の対応」と受け止められがちですが、実際には、
- 制度設計を丁寧に詰めるため
- 財源の裏付けを確認するため
- 継続性を慎重に判断するため
といった、責任ある判断の結果である場合も少なくありません。給食費無償化も、そうした考え方に基づくものとわたしは理解しています。
まとめ
地方自治体の予算は、国の予算動向をにらみつつも、一定の想定を立てながら編成され、当初予算と補正予算、各種調整制度を使い分けることで、不確実性に対応する仕組みとなっています。国が暫定予算でスタートしたとしても、地方自治体の予算審議や市政運営が直ちに混乱するわけではありません。
今後も、予算書の数字の奥にある意図や課題を丁寧に読み解き、久喜市政にしっかりと反映していきたいと思います。
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